The Study of Bag End

ゴンドールの衰退と栄華を表現する『ロード・オブ・ザ・リング』のサウンドトラック

映画『ロード・オブ・ザ・リング』には、象徴的なサウンドトラックが複数ありますね。特に第一部から第三部までの各メインテーマとなった音楽は、空で鼻歌を歌える人も、音楽をちょっと聴いただけで映画の場面を思い出せる人もいると思います(筆者もその一人です)。

ここでは、映画の音楽をより楽しんでもらえるように、第三部『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』でメインテーマとなった「ゴンドール王国(The Realm of Gondor)」のテーマ(ライトモチーフ)を紐解きます。

本記事では映画の音楽を複数紹介しますが、 YouTube の動画は著作権が管理された YouTube アートトラックです。安心してご視聴ください。

「ゴンドール王国」とは?

ところで「ゴンドール王国」ってどの音楽かという話からはじめます。

このテーマは『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』の劇中に初めて使用されます。以下の動画を冒頭から1分20秒頃まで、じっくり聴いてみてください。どこの場面で使用された音楽か当てられますか?

管楽器(ここで使用されているのはフレンチホルン)の独奏は、哀愁がありながら栄華の歴史の重みを感じさせるように感じられます。

この音楽は映画に使用された音楽と同じバージョンですが、どこで流れるか当てられましたか? 答えは「エルロンドの会議」で、フロドが台座に一つの指輪を置いた後、ボロミル(ボロミア)が立ち上がって「(指輪は)授かりものだ!」、「我が民の血で君らの領土を守ってきた」(『ロード・オブ・ザ・リング』字幕より引用)と演説をはじめるところです。会議の出席者一同が指輪を目にして怪訝な顔をする中で、覇気があったのは彼だけでしたね。

この音楽はゴンドールを表現するテーマの一つとして第一部から第三部まで使用されます。第三部『王の帰還』でのメインテーマとして記憶している人もいると思います。実はこのテーマ、この通り第一部から存在したのですが、第三部での感動を高めるために使用は控えられ温存されたものの一つです。

例外として第二部『二つの塔』のエクステンデッド・エディション(拡張版)の追加シーンで使用されましたが、映画公開当時、劇場鑑賞した人がこの後「ゴンドール王国」を耳にするのは第三部だったんです。

第三部『王の帰還』がはじまると、随所にこの「ゴンドール王国」のテーマの断片が埋め込まれていきますが、ここで初めてフルオーケストラでモチーフもきちんと演奏されます。以下の動画の4分18秒から5分40秒まで聴いてみてください。いよいよミナス・ティリスにやってきたガンダルフとピピンが飛影に運ばれ都を駆け上がっていく場面です。この場面と音楽の組み合わせは気分が高揚するほどかっこいいですよね。この4分18秒のところでちょうど、ガンダルフがゴンドールの領土に入ったことをピピンに告げます。

※ここに埋め込んだ動画は、時間位置を合わせているので再生すれば4分18秒からはじまります。

ここまで「ゴンドール王国」のテーマに絞って音楽を聴いてみると、音楽が二種類あることに気が付きませんか?

ゴンドールの衰退を表現するモチーフ

ここでもう一度、裂け谷でのボロミル(ボロミア)の音楽を聴き直してみましょう。デジタル音源で情緒はありませんが、わかりやすいようにメロディを抜き出して弾いてみたものです。

Gondor in Decline(参照:Doug Adams, The Music of the Lord of the Rings Films, p. 67)

これは「ゴンドール王国」のうち、後半のパートが下降してゴンドールの衰微を表す「ゴンドールの衰退(Gondor in Decline)」というライトモチーフです。読める人向けにスコアにすると以下の通り、後半の紫色のブロックは、「レーラーソー」の後、下降傾向にあることがわかります。

楽譜 image (c)The Study od Bag End
Gondor in Decline(参照:Doug Adams, The Music of the Lord of the Rings Films, p. 67)

ボロミルが裂け谷で声高らかに語りはするものの、ゴンドールは長きに渡って王不在にあり、国土は減少していました。『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』中の悲劇的な場面の一つ(原作との違いはさておき…)、ファラミル(ファラミア)がオスギリアス奪還のため出陣していく時の「ゴンドール王国」は「衰退」のモチーフだけが使われていることがわかります。1分21秒から2分0秒までをお聴きください。

ゴンドールの栄華を表現するモチーフ

上記の動画「The Sacrifice of Faramir」は、「ゴンドール王国」のモチーフを繰り返しますが、1分40秒頃に少しだけ上昇します。けれど、もう一方の栄華を表現するモチーフほどの上昇は見られず、すぐに下降していきます。もう一方のモチーフの上昇は、楽譜からも明らかですが、後半のパートは意気揚々と上昇します。モチーフの名前はそのままですが、これは「ゴンドールの上昇(Gondor in Ascension)」といいます。

Gondor in Ascension (参照:Doug Adams, The Music of the Lord of the Rings Films, p. 68)
楽譜 image (c)The Study od Bag End
Gondor in Ascension (参照:Doug Adams, The Music of the Lord of the Rings Films, p. 68)

こうして二つのバージョンを知ると、どういう場面でどちらが使用されるのが適切かおわかりになると思います。当然、アラゴルンがゴンドール王として戴冠する時には「上昇」のバージョンが流れます。今度は2分43秒から3分14秒までをお聴きください。

この二つのバージョンがあることがわかったら、どんな風に使い分けているのか着目しながら聴いてみてください(映画を観ながらでもよいですね)。音楽を作曲したハワード・ショアさんが場面ごとにどう考え、音楽を作っていったのかがわかって映画の味わいが増しますよ!

参考文献

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