The Study of Bag End

エルロンドの年齢はいくつか

…わたしの記憶は上古の時代にまでさかのぼる。エアレンディルがわが父である。わが父は没落前のゴンドリンで生まれた。わが母はドリアスのルーシエンの息子、ディオルの娘、エルウィングである。わたしは西方世界の三つの時代を見てきた。多くの敗北と、多くの虚しい勝利を見てきた。*1

これは、フロドの持つ力の指輪の処遇をめぐる会議での、エルロンドのせりふです。このせりふから、エルロンドは第一紀に生まれ、第二紀、第三紀を生きてきたとわかります。

ところで、エルロンド卿。具体的には何年生きていらっしゃるんですか?

Google で検索をしていたところ、「エルロンド 年齢」というキーワードを発見。興味本位で開いてみると、エルロンド卿の年齢を 10,829 歳(第三紀の 3018 年時点)と書いた記事が一番上に表示されました。

うーん、聞いている話と違うような……と思い英語で検索すると、まったく異なる年齢が表示されます。「How old is Elrond」で検索。すると、エルロンドは 6,518 歳(『指輪物語』の時代)と書かれた記事が表示されました。さっきの年齢とは、ほとんど1.7倍もちがいます。

何千年も何万年も生きるのがどんな気分なのか人間には想像もつかず、大した差ではないような気にもなります。けど、時に「設定魔」と呼ばれることのあるトールキン教授です。神は細部に宿るのです。ですから、両方の年齢がどのように算出されたのかを見て、エルロンド卿の年齢を覚えてお帰りいただけたらうれしいです。

大前提

こうした話をするときに重要なのは、試算する年を確定させること。この記事では、 3018 年時点でエルロンドが何歳なのかを算出します。冒頭のエルロンドのせりふも、3018 年の話ですし、ちょうどいいでしょう。

エルロンドの年齢を算出

第二紀と第三紀

トールキン教授の作品中の記述から、3018 年時点のエルロンドの年齢を求めましょう。まずはわかりやすいところから。

第二紀が 3441 年だったこと、第三紀はエルロンドの会議の時点で 3018 年であることは『指輪物語』を見れば明らかです。

3441 エレンディルとギル=ガラド、サウロンを打ち倒す。[中略]第二紀終わる。*2

第三紀 3018 年の 10 月はこうです。

25日 エルロンドの会議*2

この 3,441 と 3,018 を足し算すると、 6,459 年になります。先ほど取り上げた検索結果のどちらも、ここは間違いようがないでしょう。この二つに差が出たのは、エルロンドが生まれた年から第一紀の終わりが何年あったのかの算出方法にあるということでしょう。

先ほどの検索結果によると、エルロンドを1万歳超と算出したほうでは、エルロンドが生まれてから第一紀の終わりまで 4,370 年あるということになります。ずいぶんありますね。もう一方は 59 年です。

ちょっとややこしい第一紀

第一紀は、『シルマリルの物語』と『指輪物語』では後の二つの時代ほどわかりやすい形で残されていません。けど、エルロンドの双子の兄弟の記述から算出できます。

[第二紀]442年 エルロス・タル=ミンヤトゥル死す。*2

余談ですが、『指輪物語』最新版では、カナ表記がタル=ミンヤトゥアからタル=ミンヤトゥルに変更されました。逝去年だけではわかりませんが、「アカルラベース」(『シルマリルの物語』収録)にはこう書かれています。

エルロスは 500 年生き、410 年間ヌーメノール人を統治した。*3

500 – 442 は 58 年です。つまり、エルロンドとエルロスは、第一紀が終わる 58 年前に誕生した計算になります。

こうした数字を計算していくと、エルロンドの年齢は 6,517 歳(3018 年時点)です。第一紀分 58 + 第二紀 3,441 + 第三紀分 3,018 です。

先に紹介した、英語版の 6,518 歳は、 3019 年で試算したんでしょうね。

もう一方の、1万歳超は Wikipedia の「第一紀 (トールキン)」の項目を参考に「第一紀はおよそ4902年続き」と、検索すると出てくるエルロンドの生年から割り出したのだと思います。少しわかりにくいのですが、前者は二本の木の時代も含んだ第一紀ですが、一般的に出回っているエルロンドの第一紀 532 年生まれという情報は、太陽が昇ってから数え始めた年です。試しに 4902 – 532 を計算すると、 4,370 になります。これは、前述した数字と同じですね。

未邦訳の「中つ国の歴史」シリーズには、第一紀のもっと具体的な年表があります。けど、日本語に翻訳されている分だけでもこれだけわかるということを示すために、今回は参照しません。こうした細かな話を好む読者がどれほどいるか未知ですが、原作を自分で調べてみるのはおもしろいですね。

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参考文献

  1. J・R・R・トールキン著 『指輪物語 旅の仲間』 十四「エルロンドの会議」、瀬田貞二・田中明子訳(電子書籍版)
  2. J・R・R・トールキン著 『指輪物語 追補篇』 B「代々紀(西方諸国年代記)」、瀬田貞二・田中明子訳(電子書籍版)
  3. J・R・R・トールキン著、クリストファー・トールキン編 『シルマリルの物語』 「アカルラベース」、田中明子訳(電子書籍版)

※引用部[]内は筆者註である。また漢数字は読みやすさの観点から算用数字に書き換えた。