The Study of Bag End

『終わらざりし物語』がテーマの2021年トールキン公式カレンダー

2021年のトールキンカレンダー 表紙
カレンダー表紙

多様な画家や題材を選んで、毎年発売されるトールキン公式カレンダー。

2021年のトールキン・カレンダーは『終わらざりし物語』を題材に、トールキン作品の画家として著名な三人、アラン・リー、ジョン・ハウ、テド・ネイスミスの作品が4点ずつ収録+1作品されました。これは主に『Unfinished Tales(終わらざりし物語)』40周年の新装版(2020年10月発売)の挿絵から選ばれたもの。1か月に1点ずつ作品が載っています。

カレンダー背面

書籍のほうが発売された頃に、出版社によって挿絵が紹介されました。以下がそのツイートです。

この4点はいずれもカレンダーにも収録されていますよ。左上から時計回りに、9月10月4月12月です。このツイートの他にも、インターネット上で閲覧できる作品はリンクを掲載します。もしお気に召したら、素晴らしい作品を見せてくださるアーティストのみなさんのためにも、このカレンダー(通常、その年のうちに入手困難になります)や新しい『Unfinished Tales』をチェックしてみてくださいね。

👉🏻 Tolkien Calendar 2021 – リリース情報

👉🏻 『Unfinished Tales』(2020年秋発売) – トールキン書籍案内

1月 「タニクウェティル」 テド・ネイスミス作

同作品はテド・ネイスミスさんの公式サイトで閲覧可。
Taniquetil – Ted Nasmith

この絵には、『終わらざりし物語』第一部に収録されている「トゥオルおよびかれがゴンドリンを訪れたこと」の一文が添えられています。トゥオルがネヴラストにたどり着いて、ウルモ様に見せられた幻影。「その時ウルモは大いなる角笛をかかげ…」(上巻51ページ)からはじまる描写は、ヴァラールに対する畏敬の念を感じさせます。トールキンも同じ構図でタニゥエティルを描いていますけど、ネイスミスさんの絵はよりリアルで威風堂々としています。

トールキン教授の作品のほうは、この作品を所蔵するオックスフォード大学のボドリアン図書館と提携してプリントを販売する Museoteca で見られる他、邦訳が出ている『トールキンによる「指輪物語」の図像世界』(原書房刊)にも収録されています。
Museoteca – Halls of Manwe on the Mountains of the World above Faerie, J.R.R. Tolkien

※この作品は新装版『Unfinished Tales』には収録されていません。

2月 「ベレグ、アモン・ルーズに到来する」 ジョン・ハウ作

この作品はカレンダーではトリミングされていますが、書籍にはトリミングなしで載っています。トゥーリンを追ってベレグがアモン・ルーズへ向かう場面が描かれています。彼が背負った大きな弓と頂上に赤い花(セレゴン)が覆う丘の様子が象徴的です。

3月 「緑なすエルダロンデ」 アラン・リー作

ヌーメノール島、エルダンナ湾の中央に位置する、ヌーメノール一美しい港エルダロンデ。常緑で木が甘い香りで満たしていたことからニーシマルダール(香木の地)と呼ばれた地域は、エレッセアからやってきたエルフたちも「まるでエレッセアの港」と絶賛していた様子。ロスローリエンのマルローン樹のゆかりの地でもあります。さぞ美しいだろうと思います。

アマゾンのドラマでさぞ美しいだろうこの土地を舞台にしてもらえないかな……などと、淡い期待をしています。

4月 「グラウルングとアザガール」 ジョン・ハウ作

先程も取り上げたツイートの右下の作品がそうです。

中央に描かれているのは、第一紀の中つ国に種々のわざわいをもたらしたグラウルング。画面右下で厳しい兜を被って顔をこちらに向ける人物もまた印象的です。面頬を持つノグロドのドワーフの兜にご注目ください。この絵が挿絵として添えられた第一部「ナルン・イ・ヒーン・フーリン」には、のちにトゥーリンが身につけたハドルの兜の出自が書かれています。

ジョン・ハウさんは、『ロード・オブ・ザ・リング』製作のためにニュージーランドへ赴いた時、わざわざご自身のコレクションの鎧を持参したエピソードが有名です。鎧や兜へのこだわりある描写もジョン・ハウさんならではだと思います。

5月 「アルダリオン、初航海から帰還する」 テド・ネイスミス作

のちに第六代ヌーメノール王となるアルダリオンは、母方の祖父ヴェアントゥアとともに初航海に出ました。彼らが利用するのは、3月のエルダロンデとは反対側、東のローメンナです。夕方に帰還した様子と巨船ヌーメルラーマールが描かれています。こちらの作品はテド・ネイスミスさんの公式サイトで閲覧可。
Aldarion Returns From His First Voyage – Ted Nasmith

6月 「アムロスとニムロデル」 アラン・リー作

中つ国の悲哀の一つ場面を描いた作品。アラン・リーさんの繊細なタッチと色づかいが見事です。『指輪物語』ではレゴラスが旅の仲間に聞かせる詩ですが、第二部収録の「ガラドリエルとケレボルンの歴史」に、ロスローリエンとアムロス、ニムロデルの関係を紐解くセクションがあります。

File:Alan Lee – Amroth and Nimrodel.png – Tolkien Gateway

7月 「ダゴルラドの戦い」 ジョン・ハウ作

ダゴルラドの戦いは、第二紀の終わり、エルフと人間の最後の同盟とサウロンの戦いの一つ。スランドゥイルの父(つまりレゴラスの祖父)のオロフェアがこの戦いに出向いた時の話も上記と同様に「ガラドリエルとケレボルンの歴史」に収録されています。

8月 「偶然の出会い」 アラン・リー作

ガンダルフとトーリンがブリー村の近くで偶然出会った時の様子が描かれた、アラン・リーさんの作品。遠くにブリーの丘と、夕焼けに染まる空に一つ星が輝いています。これは「エレン スィーラ ルーメン オメンティエルヴォ(われらのあい出会う時、一つ星が輝く)」でもありますね。

9月 「キリオンとエオルの誓い」 テド・ネイスミス作

ゴンドールの執政キリオンによって、エオセオドにローハンが割譲される時の儀式を描いた作品。

同作品はテド・ネイスミスさんの公式サイトで閲覧可。
The Oathtaking of Cirion and Eorl – Ted Nasmith

ネイスミスさんは、1990年代にも同様の題材を描きました。公式サイトにあるご自身のコメントには、その作品を大幅に改良したものだとありました。構図を西に向けて夕方の太陽を描き、豊かな色彩を取り入れたこと。それから、ここに立ち会ったと言われる人物や従者も注意して描き、これが夏だったことから白の山脈の積雪の量を減らしたということ。ほぼ30年近く後の作品ですから、ネイスミスさんのイラストレーターとしての熟達が比較すると明らかです。

10月 「指輪狩り」 ジョン・ハウ作

第三部 第四章「指輪狩り」からぞっとするようなワンシーン。平穏なホビット庄に、指輪を求め黒の乗手がやってくる様子が描かれています。このツイートの右上です。

11月 「グラウルング、ナルゴスロンドを発つ」 アラン・リー作

荒廃したナルゴスロンドが描かれています。そこから出てきたグラウルングをマブルングが覗き見る場面。

12月 「彼は雪のなかのゴンドリンを見た」 テド・ネイスミス作

9月のキリオンとエオルと同様に、ネイスミスさんが過去に描いた題材に再び取り組んだもの。以前は、ゴンドリンのトゥムラデンの谷が「緑の宝石」と言い表されていることに気を引かれたようです。今作品は、『終わらざりし物語』をよく読んで、季節が冬であることに気がついたそう。この点に気を配って描いたというエピソードが作品のページで紹介されています。
“He Beheld a Vision of Gondolin Amid the Snow” – Ted Nasmith

2022年 「青の魔法使い」 テド・ネイスミス作

2021年のカレンダーの表紙にもなったこの作品は、青の魔法使い(イスリン・ルイン)を描いた作品として最も有名といっても言い過ぎではないように思います。

The Blue Wizards Journeying East – Ted Nasmith

『Unfinished Tales』(2020年秋発売)には、イラストがもっと収録されています。カレンダーのほうが作品も大きく見られていいのですが、ご興味ありましたら書籍もおすすめです。