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長編アニメ映画『ザ・ロード・オブ・ザ・リングス:ロヒアリムの戦争』製作が決定!

The Lord of the Rings: The War of the Rohirrm Logo
© New Line Cinema

トールキン教授が『指輪物語 追補篇』であらましを描いた、ローハンの第9代国王で槌手(ついしゅ)王と呼ばれたヘルム王。彼の時代にローハンを見舞った苦境の物語が『ザ・ロード・オブ・ザ・リングス:ロヒアリムの戦争(邦題不明、原題:The Lord of the Rings: The War of Rohirrim)』と題されたオリジナル長編アニメーション映画が製作されることになりました。判明したのは日本では6月11日になってからのこと。

ヘルム峡谷を舞台にするということですが、ヘルム峡谷という名前で呼ばれるようになったのは、この時のヘルム王の籠城が由縁。原作にならうなら、作品中ではヘルム峡谷とは呼ばれないかもしれませんね。細かい話はここまでです。

これは、ピーター・ジャクソン監督作の映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の製作を手がけたニュー・ライン・シネマのプレスリリースに基づいて書いています。

今度のアニメ映画は、そのニュー・ライン・シネマがワーナー・ブラザース・アニメーションと提携して製作、ワーナー・ブラザースが全世界に配給の予定。監督を日本の神山健治さんが務めます。氏は国際的に有名なアニメーション監督で、これまで公開された作品には、『攻殻機動隊』シリーズ、『精霊の守り人』、『東のエデン』などの監督作品があります。お気に入りの作品の翻案作品に、自分の国の人が関わることをとてもうれしく思います。ぜひ素晴らしい作品にしていただきたいですよね。アニメーション製作のスタジオは、同じく日本の Sola Entertainment。同社のWebサイトによると、複数社で取り組むようで「確認中(TBC)」のステータスになっていました。

神山さんの次回作「Blade Runner: Black Lotus」で製作総指揮を務めたジョゼフ・チョウさんは、 Sola Entertainment のCEOです。本作でもジョゼフ・チョウさんがプロデューサーを担う他、ジェフリー・アディスさんとウィル・マシューズさんの二人が脚本を担当。この二人はNetflix製作の『ダーククリスタル: エイジ・オブ・レジスタンス』でも共同で脚本を書いています。

それから、トールキンファン&『ロード・オブ・ザ・リング』ファンが驚き喜ぶ関係者が一人います。映画『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』でピーター・ジャクソン監督とともに脚本を担当したフィリッパ・ボウエンさんが顧問に就任。『ロード・オブ・ザ・リング』の映像特典やオーディオ・コメンタリーでもおなじみですよね。

『ザ・ロード・オブ・ザ・リングス:ロヒアリムの戦争』は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作とつながる作品を目指すということ。映画の物語はもちろんのこと、アート的な要素も盛り込むということですから、フィリッパさんはこの面の相談役としてお仕事されるんじゃないでしょうか。

PJとフラン・ウォルシュさんの関与はあり得るのか? プレスリリースにそうした記載はありませんでした。

ところで、気になる公開日ですが、現時点では年すら不明です。ただし、劇場公開のために企画は大急ぎで進行中。現在は、前述の Sola Entertainment でのアニメーション製作と声優の配役の真っ只中ということです。

今年で『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』公開から20周年を迎えます(日本では2002年春公開)。このお祝いムードの中で続報が出てくるんでしょうか? 楽しみに待ちましょう!

神山監督は、6月11日の夜に Twitter を更新。「好機はめったに訪れない」(拙訳)とコメントしました。

さて、ここからはプレスリリースを離れて、どんな作品になるのかについて触れたいと思います。これは想像でしかありませんので、ここで引き返していただいてもけっこうです。けど、よろしければお付き合いください! 原作を読んでいない人にとってはネタばれになるかもしれないので、その点はご注意ください。

槌手王ヘルムについては、『指輪物語』本編ではなく『追補篇』に記載されています。さらに、トールキン教授が書いていることからわかるのは大筋、だいたいの流れです。大筋は生かしたまま、脚本家のお二人によってアニメ独自の補完がなされるんじゃないかと予想しています。

一部では原作は『シルマリルの物語』か?『終わらざりし物語』か?と言われているようですが、この二作の映像化権はワーナーにはないはず。『ホビットの冒険』、『指輪物語』が原作になると考えられます。

ヘルム王はどんな人物かというと、トールキンはこう書きました。

エオルからセオデンにいたる歴代のマークの王のうち、槌手王ヘルムについて述べられていることが最も多い。かれは力すぐれた不屈の人であった。
J・R・R・トールキン著、瀬田貞二・田中明子訳『指輪物語 追補篇』 「A 王たち、統治者たちの年代記」, Apple Books(version 1.1), 評論社, 2020年

ヘルム王は、素手で戦っても強かったことから、槌手(ついしゅ)王(ハンマーハンド)と呼ばれました。ローハンの語り草になったのはこの腕っぷしの強さに加えて、彼の治世にローハンが陥った苦難のためでしょう。近隣に住む褐色人(ダンレンディング)との戦いに加え、「長い冬」と呼ばれた厳しい冬がありました。

映画『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』にも褐色人は登場しました。こう言えば、思い出せる人も多いでしょう。サルマンが人間をたきつけてローハンの村落を急襲させる場面がありますが、そのたきつけられた人たちが褐色人。ヘルム王からセオデン王の時代に至るまで因縁を残していたところへ火種を巻くところはサルマンの抜け目のない賢さを表しているかのようです。

褐色人(ダンレンディング)の呼び名はロヒアリムが彼らにつけた名前で、逆にロヒルリムはフォルゴイル(藁頭の意)と呼ばれていました。褐色人とロヒルリムは同じく人間ですが出自が異なる民族です。ここ差別を助長しないよう大衆向けに描けるのか、どう描くのかには個人的に関心があります(これはアマプラの『指輪物語』のドラマでも同じ)。

ところでヘルム王の時代に、ローハン周辺はフロドが旅に出る時代とはちょっと違います。アイゼンガルドにはまだサルマンは住んでいませんでした。後にサルマンが管理人にされたというだけで、アイゼンガルドはもともとゴンドールの所有物。ヘルム王の時代、ここはその褐色人に占領されていました。アニメでは主として、この人たちとの争いが描かれると予想します。角笛城に籠城する、辛く苦しい物語になるかもしれません。けど、後にギムリが惚れこむ美しいアグラロンドが見られるといいなと思います。

同時期、ゴンドールは同様に侵攻を受けてローハンの救援に向かうことができませんでした。アザヌルビザール含む「ドワーフとオークの戦い」はさらにこの後のこと。サウロンの影響と思しき力が手を替え品を替え、侵略しようとしていることがこのアニメを見るともっと俯瞰できるようになるかもしれません。追補篇でしか描かれないことにも数多くの物語がありますが、淡々とした描写もしくは年表ですから、歴史を広い視野で見れるようになるには、読み込みが必要です。アニメがその助けになってくれたらいいなと思います。

映画ではローハン軍がゴンドールを救いました。今度のアニメでは、逆にゴンドール軍がローハンを救う場面が描かれるかもしれません。勝手に想像しただけで胸が熱くなる展開です。春にヘルムの次の王フレアラフが王位につくまでを描ければ、少しくらいは立ち直ったところが描けるでしょうし、もしかしたらサルマンがアイゼンガルドにやってくるかもしれません。理論上ガンダルフやラダガストの出番をつくることは可能ですけど、どうなるでしょうね?

褐色人との争いを描くとすれば、エドラスでのヘルム王とフレカの事件は外せないでしょう。これをはじまりとするなら、物語はヘルム王が63歳の年2754年からはじまるかもしれませんね。

余談
『指輪物語』は2020年末に、これまでの翻訳を改訂した新たな翻訳(最新版)が出ました。この中でこれまで「ロヒアリム」とされてきた表記は「ロヒルリム」、「褐色人」は、本記事中で表記した通り「褐色人(ダンレンディング)」とルビが振られるようになりました。彼らの国「褐色人の国」は同様に「褐色国(ダンランド)」です。現時点でこの最新版の翻訳は Apple Books でしか読めず新しい表記が普及しているとは言えないと判断し、この記事では「ロヒルリム」ではなく「ロヒアリム」を採用しました。改訂に関しては「日本語版『指輪物語』の改訂(2020年)特集」で特集しています。

更新履歴
2021/06/12 神山監督のコメントと、作品の展開予想へ一文、余談を追加

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