第4弾の中つ国の地図―アマゾン・ドラマ版『指輪物語』
アマゾン・ドラマ版『指輪物語』(ロード・オブ・ザ・リング)、2019年3月6日23時(日本時間)に、中つ国の地図第4弾が発表されました!地名と街道が多数追加されているので、じっくり見ていきましょう。なお、考察に使用する地図は、『終わらざりし物語』下巻の「第三紀末の中つ国の西方」の地図です。
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— The Lord of the Rings on Prime (@LOTRonPrime) 2019年3月6日
新しく追加された街道
今回、やっと道が加えられました。地図上には以下の3つ(分岐を含めると4つ)の街道が描かれています。いずれも街道の名前は描かれていませんが、以下の通りです。
- 東街道 – ミスロンドからカルネン川の水源(くろがね山脈)までの、東西を結ぶ道
- 南北街道 – フォルノストから南へ下り、カレナルゾン谷(後のローハン谷)から白の山脈の北部を通り、ミナス・アノールまでを結ぶ道
- 南北街道の分岐 – 南北街道を塚山丘陵の南部で東へ抜けて、バランドゥイン(ブランディワイン川)をわたり、東街道に接続する道
- ハラド街道 – イシリエンからハラドへ向かう、南北を結ぶ道
ホビット族が第三紀1600年にブリー村の西へ移動するまでは、ブランディワイン川ではなくバランドゥインと呼ばれましたから、その時より前の地図と推測ができます。
新しく追加された地名
追加された地名は合計42個。この数になると、数えるのも一苦労です。カテゴリにわけて記載しますね。
居住地など
- Mithlond – ミスロンド(灰色港)
- Emyn Beraid – エミン・ベライド(塔山丘陵)🔮
- Annuminas – アンヌーミナス🔮
- Fornost – フォルノスト
- Amon Sûl – アモン・スール(風見が丘)🔮
- Gundabad – グンダバド
- Imladris – イムラドリス(裂け谷!)
- Moria – モリア
- Lond Daer – ロンド・ダイア
- Orthanc – オルサンク🔮
- Minas Anor – ミナス・アノール(のちのミナス・ティリス)🔮
- Minas Ithil – ミナス・イシル(のちのミナス・モルグル)🔮
- Osgiliath – オスギリアス🔮
- Pelargir – ペラルギア
- Ethir Anduin – エシア・アンドゥイン
- Umbar – ウンバール
- Barad-dûr – バラド=ドゥーア
新たに公開された地図の地名から、時代を限定する材料が得られました。
この地図の時代は、ヌーメノールの没落が起き、エレンディルとその息子たちがアルノールとゴンドールを創建した第二紀3320年から、ミナス・イシルが第三紀2002年に陥落する頃までの2223年間のいずれかと推測ができます。バラド=ドゥーアが存在したのは、第二紀1600年に完成して3441年に「エルフと人間の最後の同盟」によってサウロンの最初の敗北を喫するまで。その後、第三紀2951年まで再建されませんでした。このふたつの辻褄をあわせるのなら、第二紀3320年から同3441年の間ということになるのでは。また、前回までに追加されていたカレナルゾン(のちのローハン)やラウレリンドレナン(のちのロスローリエン)とも年代が合います。とはいえ、第二紀の終わりにバラド=ドゥーアが陥落した際に、土台は取り残されませんでした。ですので地図に残っていてもいいのかもしれません。それを考慮すると幅広い年代も入ってくるのですが。ですが、前述した通り、ブランディワイン川をバランドゥインと呼んだのは第三紀1600年頃までなので、広げてもそれまでかもしれません。
いずれの地名もエルフ語の一種シンダール語で書かれていることが興味をそそります。時代だけでなく、種族によっても使用される言語は異なります。つまり誰によって使用される地図なのかのヒントになるはずです。それに、ビルボやフロドの時代には西方語が優先されて地図に載っていますから、時代は大きく異なるのだろうと予想できます。
Twitterで複数の方が、今回追加された地名はパランティアが配置された場所が網羅されていると指摘していました。たしかに!エレンディルがヌーメノールから持ってきたパランティアは合計7つで、中つ国の各地に配置されました。パランティアの見た目とはことなりますが、パランティアが置かれた場所にはわかりやすくなるよう、一覧に水晶の絵文字🔮をつけました。
エレンディルたちドゥーネダインはなぜあんなにもサウロンの本拠地に近い場所を、自分たちの拠点として選んだのかは気になる点です。残念ながら、彼らに言わせるとヌーメノールもろともサウロンも滅んだものと考えたようです。とはいえサウロンは人間やエルフを超えた存在だったために見誤ったのでしょう。
余談ですが、モリアについては発見がありました。モリアは「暗き穴」という意味を持つシンダール語なので、そう呼んでは荘厳な都市の住人であるドワーフ族にとっては侮辱になるように感じました。ドワーフたちは遡ること第一紀から第三紀1981年まではこの地に住んでいましたから、それまでは他のシンダール語の地名にならって「ハゾドロンド」と書くほうが自然だと思ったのです。この地図を見た時にはそう思いましたが、第二紀にドワーフのナルヴィとノルドール・エルフのケレブリンボールが作ったドゥリンの門に刻まれているんですね。テングワールで「モリア」と。何かしらの理由で、そう呼ぶことが許されていると考えたらいいのでしょうか。
山、山脈、島など
- Ered Luin – エレド・ルイン(青の山脈)
- Ered Mithrin – エレド・ミスリン(灰色山脈)
- Hichaeglir – ヒサイグリア(霧ふり山脈)
- Caradhras – カラズラス
- Fanuidhol – ファヌイゾル
- Nanduhirion – ナンドゥヒリオン(おぼろ谷)
- Ered Nimrais – エレド・ニムライス(白の山脈〉
- Orodruin – オロドルイン
- Tolfalas – トルファラス
川・湖など
- Lhûn – ルーン
- Nenuial – ネヌイアル(夕おぼろ湖)
- Baranduin – バランドゥイン(のちのブランディワイン川)
- Mitheithel – ミスエイセル(にびしろ川)
- Bruinen – ブルイネン(鳴神川)
- Glanduin – グランドゥイン
- Nîn-in-Eilph – ニーン=イン=エイルフ(白鳥川)
- Gwathló – グワスロー(灰色川)
- Celebrant – ケレブラント
- Ninglor – ニングロール
- Anduin – アンドゥイン
- Celduin – ケルドゥイン(早瀬川)
- Carnen – カルネン
- Angren – アングレン(アイゼン川)
- Ringló – リングロー
- Morthond – モルソンド
第二回目の地図の発表の時点でこの地図を第三紀のものだと考えている旨を書きました。現段階ではそれを考え直し、この地図は第二紀の終わり頃から第三紀の初期の地図ではないかと考えます。その考察をした時点で、エリアドール中央部・南東部からファンゴルンの森にかけてもっと木々が描かれている必要がある
と書きましたが、これはヌーメノール人が船作りのために木材を伐採していったこと、最終的にはサウロンとの戦争による影響があったという記述を発見しました。これを考慮すると、サウロンとの最初の戦争の後には、グワスロー周辺、ミンヒリアスなどは地図と同じ状態になっていたと考えられます。
ここまで、闇の森の東入地のことは考慮せずに書き連ねたのですが、これができたのを北国人のヴィドゥガヴィアやゴンドール王ローメンダキル二世の時代とすると、第三紀1200年から1300年代のこととして、より絞り込めます。北国人からエオセオドが出ているので、ロヒアリムの興りが描かれると考えられなくもないですね。キリオンとエオルの時代は2000年代中頃まで訪れませんが、物語の初期の地図ととらえることもできるかもしれません。
地図はおそらくはまだ不完全でしょうから、重要な手がかりはまだこれから追加されるのだと思いますが、いったいこれから私たちは何を目にすることになるのか、楽しみで次のヒントが待ち遠しいです。