The Study of Bag End

田中明子さんのご逝去

トールキンの『指輪物語』訳者の一人であり、『シルマリルの物語』の訳者でもいらっしゃる田中明子先生が2020年12月9日に、逝去されたという知らせがありました(享年94歳)。トールキン世界を豊かな言葉で日本の読者にひらいてくださったことに感謝の気持ちは尽きません。

『指輪物語』電子書籍版の刊行に際して、評論社さんにより訃報が付記されていました。『指輪物語』電子書籍版は、新版から固有名詞の見直しを含めた改訂がありましたが、これは田中先生ご自身の念願でいらしたそうです。

最初に瀬田貞二さんが『指輪物語』を翻訳された際にも「お手伝い」(ご本人のお言葉をそのまま引用)をされました。当時、共訳として名を連ねることは瀬田さんからご推薦もあったようですがこの時には瀬田さんの単独訳として刊行され、1992年の新版刊行の際に共訳者として田中さんお名前が出されました。『シルマリルの物語』もまた、瀬田さんの急逝により田中さんが翻訳を引き受けてくださったことから、トールキンの上古の物語を日本語で読むことができます(2003年にご自身により翻訳の見直しがなされました)。

トールキン作品の翻訳は他に『ブリスさん』(1993年)、『ファーザー・クリスマス―サンタ・クロースからの手紙』(2006年、瀬田貞二さんとの共訳)などがあります。これだけにとどまらず、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の第二部以降では評論社と共に翻訳監修を務め、トールキンの作品の世界が日本語でより正確に伝わるようにしてくださりました。

最晩年までトールキン作品に尽力してくださり、本当にありがとうございました。哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。