The Study of Bag End

指輪物語:読者のための手引き書 ― The Lord of the Rings: A Reader’s Companion

表紙の写真 - Photography (c) The Study of Bag End

こんな人におすすめ

  • 『指輪物語』をすみずみまで味わいつくしたい
  • トールキンの命名の法則を知りたい
  • 『中つ国の歴史』シリーズの『指輪物語』に関連するところを読むつもり

指輪物語:読者のための手引き書(原題:The Lord of the Rings: A Reader’s Companion)』(以下、『手引き書』)は、『指輪物語』をすみずみまで味わいつくしたい人の心強い味方です。ウェイン・G・ハモンドさん、クリスティナ・スカルさんご夫妻はそろって著名なトールキン研究者です。お二人の書籍の日本語版は他に『トールキンによる「指輪物語」の図像世界』と『トールキンのホビットイメージ図鑑』、編者として『仔犬のローヴァーの冒険』(いずれも原書房刊)があります。

『指輪物語』は複雑かつ多様なエッセンスが盛り込まれているがゆえに、何度繰り返し読んでも作品を十分に理解したとは言うのは難しい、という意見は的を外してはいないと思います。それでもなんとか『指輪物語』から多くのことを知りたい読者は多いことでしょう。『読者のための手引き』は、そうしたどんな些細なことでも知りたい飽くなき欲求を抱えたトールキン読者にうってつけの手引きです。

『手引き書』初版は2005年に発売されました。それから2008年に最初の改訂があり、2014年に二度目の改訂がありました。現行版はこの2014年の改訂版(かつ『指輪物語』刊行60周年記念版)で、冒頭の写真に挙げたものがそうです。初版ではハードカバー版とペーパーバック版がありましたが、現行版ではこのハードカバー版のみです。正確であることが重要な書籍ですので、よほどの理由がない限り現行版をおすすめします。

また、この本はダグラス・アンダーソンさんの『注釈付きホビット(原題:The Annotated Hobbit)』のように原文は収録されていませんので、手元に英語版があると、より参照しやすくなります。2020年、『The Lord of the Rings』は新しい組版になりました。これに伴い、アラン・リー画伯の美しい挿絵入りのハードカバー版とペーパーバック版が発売されました。それらはこの『手引き書』に記載されたページ番号とは合いません。この点はご注意ください。

この書籍は976ページ中の大部分(741ページ)が『指輪物語』(もちろん追補篇まで)に対する解説で占めます。これは順を追って読んでいくことはもちろんできますが、不明点があった時に該当箇所を参照して使うという方法が特に使いやすいと思います。これには、トールキン自身による『指輪物語』初版から第二版への改訂の歴史や、トールキン教授が使用した一般的でない言葉に対する解説、『指輪物語』にとどまらない作品間の繋がりの提示、トールキンが完成させなかった解説付きの索引の紹介などが含まれ、どの項目もとても興味深いです。

さらに貴重な資料は『指輪物語の名前(原題:Nomenclature of The Lord of the Rings)』です。人名や地名、事物を単語別にどう翻訳するべきか、トールキン教授が生前、直々に用意した覚書です。『指輪物語』を翻訳するうえで翻訳者は必読でしょう。(2020年に改訂された『指輪物語』日本語訳の最新版も、やっとこの覚書へアクセスできるようになったことからここを大いに参照しているものと思われます)。

また、わたしのように『中つ国の歴史』シリーズに掲載されている『指輪物語』の草稿を読んでいるようなかたにとっても、本書は大いに助けになることと思います。

トールキンの『指輪物語』を深堀りするための手引き書です。未邦訳ですが、時間を割いて読む価値は十二分にある一冊です。

出版社による紹介文(拙訳)

拙訳
国民的人気作品『指輪物語』のテキストの歴史を語る唯一無二の手引きである。トールキン本人によって書かれた以前には未発表だった『Guide to the Names in The Lord of the Rings』も収録されている。

『指輪物語:読者のための手引き書(The Lord of the Rings: A Reader’s Companion)』は、国際的に著名な研究者であるウェイン・G・ハモンドとクリスティナ・スカルがトールキンの代表作を章ごとに調べ上げ、作品の発展、構造、真意について専門的な見解を示したものである。発展に与えた需要な影響やトールキンの他の作品とのつながり、誤りや矛盾、テキストの重要な変更、トールキンが用いた古語や珍しい語について論じている。

綿密な時間の計画、『指輪物語』の未完成の索引、中でも注目すべきは長いあいだ絶版になっていて、今回新たに全文が書き起こされた翻訳者向けの重要なガイドブック『命名法』あるいは『Guide to names in The Lord of the Rings』など、未発表だったり、これまで広く公表されることのなかった原稿など、参照は広範囲に及ぶ。

これらの資料があれば、『指輪物語』を熟読した読者でも、大いに楽しみ、トールキンの壮大な作品をより理解することができるだろう。

元々、2005年に出版された『手引き書』は、Inkling Studies の Mythopoeic Scholarship Award を受賞。この度『指輪物語』の出版60周年を記念して、改訂された。

補足「元々、2005年に出版された『手引き書』は…」からはじまる最後の段落以外は、2014年に出版された改訂版だけでなく、初版などにも共通する事柄です。

書籍情報(一部)

英語版

2005年の初版、2008年の最初の改訂版は省略します。

60周年記念版(改訂版)

The Lord of the Rings: A Reader’s Companion

編 Wayne G. Hammond and Christina Scull

発売日
出版社
HarperCollins Publishers
ISBN
000755690X / 9780007556908
ページ数
976ページ
定価
£30.00
公式情報
The Lord of the Rings: A Reader’s Companion – The Official Tolkien Online Bookshop

BOXセット

The Lord of the Rings: A Reader’s Companion

著 J. R. R. Tolkien
編 Wayne G. Hammond and Christina Scull

発売日
出版社
HarperCollins Publishers
ISBN
0007581149 / 9780007581146
ページ数
1472ページ
定価
£90.00
公式情報
The Lord of the Rings Boxed Set – The Official Tolkien Online Bookshop

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