The Study of Bag End

井辻朱美著『ファンタジーを読む』

2006年から2016年にかけて文芸誌などに収録された、井辻朱美氏のエッセイが『ファンタジーを読む ―『指輪物語』、『ハリー・ポッター』、そしてネオ・ファンタジーへ』として一冊にまとめられました。

井辻氏はJ・R・R・トールキンを「モダン・ファンタジーの開祖」と呼び、『指輪物語』の登場の後を第一期、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』から後を第二期、J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズ以降を第三期、ここをネオ・ファンタジーの時代と打ち立てています。本書は、副題の通りトールキン作品が読者に受容された後に出てきたファンタジーを主題とし、国内外のファンタジー作品について取り上げます。

トールキンの作品がどのようにファンタジー文学として受け入れられ、その後の作品に何が影響しているのかといった、トールキンを基としているもの、トールキンより後のファンタジー論に興味のある人に適しています。トールキン作品を外殻から理解する助けにはなりますが、目的に応じて先に『妖精物語について』もしくは『妖精物語の国へ』を読むほうがいいかもしれません。

本書のユニークなところは、ファンタジーを文学だけとどまらず、ファンタジー作品の映画や、録画できる媒体やテーマパークの登場に触れ、ファンタジーが文学から私たちの環境として隣り合わせになるまでの変遷をたどる主張にあると感じました。

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