The Study of Bag End

モリアのあとの初期の展望

中つ国の歴史(The History of Middle-earth)』シリーズの第7巻であり、『指輪物語』の草稿集でいうと2冊目にあたる『アイゼンガルドの裏切り(The Treason of Isengard)』(未邦訳)を読んでいます。

トールキンは1937年に『指輪物語』の執筆を開始しました。『アイゼンガルドの裏切り』に収録されているのは、1939年前後の草稿で、トールキンが最初の頃に考えていた『指輪物語』が読めるわけです。それは出版された原稿とおおいに違うところもあれば、大筋はすでにつかんでいるところもあり、おもしろく読み進めています。

この『アイゼンガルドの裏切り』の第11章「モリアのあとの物語の展望(The Story Foreseen From Moria)」がなかなかおもしろかったので、感想を書き記しておくことにします。未読の方はご注意ください。

ここに至るまでの草稿で、旅の仲間のメンバーになるキャラクターは出版された本と同じになっています。ここまでに、グロールフィンデルやバーリンの息子ブーリンが同行する案もあったのですが、執筆の早い段階で種族と名前は確定しました。

モリアから逃げ出て…つまりバルログが現れて一行はガンダルフを失うのですが、その後はロスローリエンに行きます。旅の仲間の離散はこの地で起きるんですよね。

フロドとサムはゴクリに道案内をさせます。ファラミアやシェロブの名はまだないものの、モルドールには谷間にある入り口から侵入して火の山を目指すという構想であることがわかります。名称が多少異なりますが…。最終的には省かれていますが、滅びの山の罅裂の地理を細かく考えていたこともわかります。

設定で一番大きく異なるのはアラゴルンとボロミアの関係だと思います。二人のご先祖の間に禍根の残る出来事があったことは、同巻のエルロンドの会議の草稿で語られています。けっこうダークですが、そちらもおもしろかったです。その設定でアラゴルンとボロミアがミナス・ティリスに戻るんですけど、なんとも…ミナス・ティリスの統治者に幸運はそもそも訪れないようです。

トールキン教授がアラゴルンとボロミアの関係にフォーカスしているからか、レゴラスとギムリがアラゴルンに同行する筋書きにはならず。でもこの二人がサルマンに捕らえられるとか、ロスローリエンから北へ一緒に戻るとか、そういう展開は意外に感じますね。でも二人が一緒に行動する様子を描いたことが、レゴラスとギムリの友情という展望を生んだのかもしれないなと思いました。

メリーとピピンに関する言及もあります。「もしどちらかのホビットが殺されるなら…」とあるんですよね。この二人のどちらかがいなくなっても私はさびしいですが、トールキン教授はこの場合、ピピンを残しておこうとしたようです。簡潔な筋書きなのでメリーに何が起きるのかはここからはまったくわかりませんが…。でも彼らが木の鬚と会うプロットはできつつあります。もともと木の巨人の国はエテン高地にあって、以前の草稿ではガンダルフが囚われたことがありました。サルマンが登場する前の話ですが…。ファンゴルンの森は、場所ごと移動させるようですね。

この章はモリア以降の展望にも関わらず、ガラドリエルの存在には触れられることがありませんでした。次章はロスローリエンの章なので、どんな展開になるのか楽しみです。

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