The Study of Bag End

トールキンにひらめきを与えたかもしれない地名

指輪物語』の執筆を開始した頃、トールキン一家はオックスフォード大学の北側エリアにあるノースムーア通り(Northmoor Road)の一軒家に住んでいました。1 執筆の早い段階でホビット族の居住地に「北の沼地」(North Moors)としてあらわれ、物語は少し形を変えましたが、地名は決定稿にも残りました。23 明示されているわけではありませんが、偶然とは言いにくい一致ではないでしょうか。

イングランド(イギリス)の地図を見ると、中つ国にありそうな地名や、実際にある地名がいくらか目につきます。グレートブリテン島は先史時代から多様な民族が住んでいた歴史があります。そのため、様々な言語の痕跡が地名に残っているのです。トールキン作品を読んで、カタカナの名詞にも意味があることを喜んだ人は、私の他にもいるだろうと思います。

そういうわけで、中つ国ではなく、トールキンの身近にあったであろうイングランドの地名について雑多に調べました(現在の地図を見ているので、地名がかわったところもあるかもしれません)。

バーミンガム(Birmingham)

トールキンは少年時代にバーミンガムのキング・エドワード校というグラマー・スクールで、ラテン語やギリシャ語など様々な言語に触れることになります。古英語(アングロ・サクソン語)との出会いもこの時期のこと。

バーミンガムの地名は、古英語由来で「Beormingasの居住地」という意味。4 Beormingasの接尾辞「-ingas」は「エオルの家の子よ!」(Forth Eorlingas)のあれと同じです。5 トールキンにとってそんなに身近な言葉だったのですね。「ham」のほうの接尾辞も英語圏の地名や苗字に多くありますが、これはもともと居住地を示すものですね。6 『農夫ジャイルズの冒険』も原題は「ハムの農夫ジャイルズ」で、この Ham からきているのでしょうね。

エッジバストン(Edgbaston)

J.R.R.トールキン ―或る伝記―』を読むと、トールキンはバーミンガムの中で繰り返し引っ越しているので住居の変遷が目まぐるしいです。多感な時期にこうした環境の変化が多かったことは、トールキンの気質にも影響があるんだろうと思います。

この地名の意味は「Ecgbaldと呼ばれた男の村」(village of a man called Ecgbald)だそうです。7 もうちょっと調べたいけど、とりあえずここまで。「ton」はホビット村の「Hobbiton」などで使われていますね。

クーム(Combe)

指輪物語の中で「Combe」といえば、ブリー郷の小谷村(Combe)があります。同じですね!小谷村の他には、ヘルム峡谷の「奥谷」(Deeping-coomb)にも同じ要素がはいっています。小谷村の名前の通り谷間を表す意味で、古英語「cumb」に由来しています。8 さらにたどるとウェールズの影響があり、ウェールズには「cwm」という形で地名になっている場所もありますね。9

combeのつく地名は、他にもウィンチカム(Winchcombe)やカースル・クーム(Castle Combe)、クーム・ダウン(Combe Down)、モンクトン・クーム(Monkton Combe)、クーム・マーティン(Combe Martin)など多く見られます。

コッツウォルズ(Cotswolds)

オックスフォードの東側に広がる丘陵地帯は、羊のいる丘といったニュアンスになるようです。10 指輪物語の中でもローハンの「高地」(The Wold)として出てきます。このロリアンの南側からラウロスの瀑布のあたりまで標高の高い地帯が続いていますね。サルン・ゲビアのことなどを考えると堅い地質のエリアなんでしょうか。

ともかくオックスフォードのエリアからみてコッツウォルズは標高が高くなっており、それで谷間の町があるのでしょう。前述のクームはコッツウォルズの中に何か所か地名になっています。
『或る伝記』によれば、トールキンは車を運転して弟のヒラリーさんのいるイヴシャムへ出かけたりしています。この丘陵地帯の北側を家族でドライブしたのではないかなぁと思います。(事故を起こしていますけど…11)。

オールドバラ(Aldeburgh)

この響きでピンとくるかたもいると思います。

オールドバラの意味は「古い砦」(Old Fort)です。12アルド川(River Alde)のほとりにあるんですけど、ローハン東境(Eastfold)にあるアルドブルグ(Aldburg)という館も「Old Fort」なんですよね。13 ローハンの第三軍団長の本陣があるのはアルドブルグで、メドゥセルドができる前、エオルが建てた館なので実際に古いと言えますねー。おおお。

この「バラ」は、burgから派生した単語で、burghの他にも bury、borough なども同様。14 タック村(Tuckborough)に出てきています。ミナス・ティリスのことをローハンの言葉ではムンドブルグ(Mundburg)と呼びましたね。

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