The Study of Bag End

方位を示すテングワール(フェアノール文字)

アマゾン・プライムのドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』、地図が公開され、次は何が来るのかと心待ちにする日々を過ごしています。第3弾の地図が公開されたタイミングでコンパスの方角を示す文字が変更されました。これには「テングワール」と名付けられた、トールキン教授が考案した想像上の文字が使用されています。

テングワールは、物語の中ではエルフ族のフェアノールがアレンジして考案したことから「フェアノール文字」と呼ばれることもあります。『指輪物語』の中でも使われました。モリア西門の扉の「唱えよ、友」や、サウロンの力の指輪の文字にテングワールが使われていることは、日本語版の『指輪物語』でも確認できます。この文字が考案された時代は『指輪物語』の頃からすると遠い遠い昔のことですが、第三紀の中つ国でもこの文字はエルフだけでなく人間やドワーフによっても使われていました。

テングワールは全部で36文字。それぞれの文字が意味を持っています。今回使用された4つのテングワールは、いずれも方位を示すものです。以下の画像の左側から、北、東、南、西を表します。なお、いずれもエルフ語のうちクウェンヤの名前です。1

方位を示すテングワール
アマゾン・プライムの地図と同じく、方位を示すテングワール

フォルメン(北)

フォルメン(Formen)はクウェンヤで北を意味します。クウェンヤは西方に渡ったエルフによって使われた言語で、ヴァリノールに位置する都「フォルメノス」などに表れます。

主に中つ国のエルフが使用したエルフ語のシンダリンでは「フォロド」が北を表します。「フォロドワイス」や「フォルノスト」にその語根が見られます。

ローメン(東)

東はクウェンヤで「ローメン」、シンダリンでは「リューン」もしくは「アムルーン」。

ゴンドール王の多くは、ヌーメノールの慣習を受け継いでクウェンヤの名前で戴冠しました。「ローメンダキル」はクウェンヤで〈東の覇者〉を意味します。また、ヌーメノールの地名「ローメンナ」の語根にもなっています。

一方、シンダリンの「リューン」は中つ国の地図を見るとモルドールの北東方向に大きく描かれていますが、ここが物語の舞台になることはありませんでした。ガンダルフは東へは赴かなかったようですが、同じ魔法使い(イスタリ)のサルマンと青の魔法使い二人はそうではなかったようです。詳細が描かれてはおらず、ミステリアスな部分ですね。

ヒャルメン(南)

クウェンヤで南は「ヒャルメン」。東と同様に、ゴンドール王にヒャルメンダキル王がいます。シンダリンでは「ハラド」。ゴンドールとつねに領有権をめぐり争っていたハラドリムは、〈南方人〉という意味になります。トールキンの言葉選びのシンプルさがよくわかる例だと思います。

ヌーメン(西)

ラテン・アルファベットの小文字の「m」に似ているテングワールの名前は「ヌーメン」といいます。クウェンヤで西。この語根を含むヌーメノールの意味は「西方国」。実際、中つ国のはるか西にありました。シンダリンになると、ドゥーンとアンヌーンという形になります。前者はドゥーネダインなど、後者はアンヌーミナスやヘンネス・アンヌーンに表れます。

トールキンは『指輪物語』の執筆の際に、自身が英語で綴った言葉とエルフ語などの言葉に差異がでるよう指示をしました。それで、日本語の場合にはカタカナに書かれている地名が何を意味するのか、何語なのか、なぜそういった名前なのか…と気になってきた時点でもはや、トールキンの意のまま、読者の言語への興味の芽はではじめているのです。

なお、方位に関して中つ国北西部の住人と話す場合、彼らは西からはじめて、南、東、北の順番で、反時計回りに列挙する慣習がありますのでご注意を。

References

  1. ^J・R・R・トールキン(著) 瀬田貞二、田中明子(訳)『指輪物語 追補編』 評論社 1992年、E.書き方、綴り方
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