The Study of Bag End

バック郷育ちのホビットの分別

フロド・バギンズの自宅と聞いてはじめに思い浮かべるのはホビット村の袋小路屋敷です。ここはホビット村の中心部にほど近いエリアで、ホビット庄の中の西四が一の庄に属しています。

しかし彼が両親を亡くしてから、ホビット庄の東境に接するバック郷のブランディバック屋敷に引き取られて大勢の親戚の中で暮らしました。ビルボの提案で袋小路屋敷に移り住むことになったのはフロドが21歳の時のこと。このことがあったから、指輪を持った逃走をはじめる際に堀窪へ引っ越すことが当然のように演出できたのでした。

時は流れ、第三紀3018年。黒の乗手に追われ、ガンダルフの導きなくしてブリー村へ進むことになったフロドが下した決断は、見張られている可能性のあるバック郷北門を通らず、古森へ入っていくことでした。フロドの考えを聞いた瞬間、フレデガー・ボルジャーは強く拒否反応を示しました。

「だけど、それだと古森にはいって行くことになるよ!」フレデガーがぞっとしたようにいいました。「まさかそんなことしようと思ってるんじゃないでしょうね。そんなこと、黒の乗手と同じくらい危険ですよ。」(中略)「あそこにはいって運のあった者なんて、今まで一人もいやしない。あんたたちは道に迷って出られなくなるよ。あそこには誰も行かないことになってるんだ。」

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ホビット村周辺のホビットもこのように語っています。

「なにせブランディワイン川のあっち側、古森のすぐきわに住んどるんだからな。あそこは、暗い、いやな所だそうだ、話半分にせよ。」

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バック郷も、そこの住人も、古森も、評判がよくありません。フレデガーの発言にメリー・ブランディバックが異を唱えます。

「そんなことはない。行くとも!」と、メリーがいいました。「ブランディバック家の者がいくよ―――どうかして気がむくとふらりと行くことがある。ぼくたち一族が使う入口があるんだよ。フロドもずっと以前に一度行ったことがある。ぼくはもう幾度も行ってるよ。もちろんたいてい明るいうちだけど。木々が眠っているように静かにしている間にね。」

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これがバック郷のホビットの常識であり、分別です。フロドはこうした環境で育ったからこそ、古森に入ることを選択できたと言えるのではないかと思います。古森に入ることはベストではありませんでした。しかし、他にできることと言えば堀窪の家で黒の乗手が迫ることを待つことだけでした。

結果として黒の乗手を一時的に巻き、ブリー村へ到達することができたので、フロドのこの選択は正しかったと言ってもいいのではないでしょうか。

Footnotes

  1. ^J.R.R.トールキン 『新版 指輪物語:旅の仲間』<上> 瀬田貞二・田中明子訳 評論社 1992年 「正体をあらわした陰謀」p.195
  2. ^J.R.R.トールキン 『新版 指輪物語:旅の仲間』<上> 瀬田貞二・田中明子訳 評論社 1992年 「待ちに待った誕生祝い」p.33
  3. ^J.R.R.トールキン 『新版 指輪物語:旅の仲間』<上> 瀬田貞二・田中明子訳 評論社 1992年 「正体をあらわした陰謀」p.195

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