「ホビット」でテーマに発展したモチーフ (サウンドトラックの話)

「ロード・オブ・ザ・リング」、「ホビット」両作品のサウンドトラックはライトモチーフを取り入れ、キャラクターの心情や世界観や文化の表現に物語の背景から迫りました。そして「ロード・オブ・ザ・リング」からあとに続いた「ホビット」においても、音楽に共通点を持たせ、同じ世界観を維持しています。「ロード・オブ・ザ・リング」から「ホビット」でのモチーフの発展をまとめます。

第一部:思いがけない冒険

「ロード・オブ・ザ・リング」では、唯一モリアのシーンがドワーフの文化に触れるチャンスですが、ここはすでに廃墟と化しています。それでも荘厳さを維持するドワローデルフの広間に着いた時、またバーリンが眠るマザルブルの間にたどり着いた時に流れるサウンドトラックの中から、「ホビット」でのドワーフのモチーフの基礎がつくられていることがわかります。ちなみに、この楽曲の音程が下降する傾向にあるのは、この地底都市がすでに没落していることが表されているそうです [1]

ドワローデルフ [2]

「ホビット」でドワーフのテーマはどうだったかをおさらいしましょう。

ドゥリンの一族(The House of Durin) [3]

トーリン / エレボール [4]

エレボール [5]

物語の展開によっては移調することもありますが、どの音楽も全音で構成されています。また、ドワーフという種族らしいどっしりとした安定感もあります。この3つのテーマを覚えて映画を見ると、巧みに組み合わせて一つの音楽を作り上げていることもわかりますので、ぜひ耳を傾けてみてください(関連を見つけた時のツイートはこちらにまとめてあります)

第二部:竜に奪われた王国

ブリー村 [6]

これは勝手に私がテーマ名として取り上げているだけですが、「ロード・オブ・ザ・リング」においても「ホビット」においてもブリー村にシーンが切り替わった時に使用されているので、おそらくブリー村のためのテーマと思っております。ピーター・ジャクソンの人参をかじる男のカメオ出演とセットで覚えておきましょう。

湖の町 [7]

これは少しこじつけかもしれませんので、音源は省略しますが、湖の町のテーマは3つ同じ音が続くモチーフが印象的です。これは「ローハン・ファンファーレ(Rohan Fanfare)」7というローハンのメインテーマと共通しています。もともと湖の町のあたりの人間とローハンの人間は同じ種族から出ていることが反映されているか、私の深読みしすぎかもしれません。

第3部:決戦のゆくえ

ミスリル [8]

「ロード・オブ・ザ・リング」では、第一部:旅の仲間の中盤、エルロンドの会議を終えた裂け谷でビルボがつらぬき丸とミスリルの鎖かたびらをフロドへ贈ります。この鎖かたびらが旅の道中にフロドの命を何度も救うことになりました。素早く2度繰り返すモチーフがそうです [9]。こちらもドワーフのテーマのグループに入るものでしょう。

「ホビット」では、闇の森のスランドゥイルと湖の町の軍勢との戦を準備するドワーフたちを背後に、トーリンからフロドへミスリルの鎖かたびらが贈られるシーンで用いられます。ビルボのために最適な最初の贈り物を見つけ出し、トーリンは感謝の気持ちと友情を示します。トーリンの慈悲の気持ちがビルボを介してフロドへ渡り、指輪戦争の一助となる、とても大切なシーンです。

「ロード・オブ・ザ・リング」で旅の仲間一同にミスリルの鎖かたびらが披露される時の音楽 [10]も関連を見つけたいところですが、残念ながら今のところわかっていません。


もしかしたらまだ他にも「ロード・オブ・ザ・リング」から「ホビット」への関連はあるのかもしれません。「ロード・オブ・ザ・リング」のサントラ解説本「The Music of the Lord of the Rings Films」の著者ダグ・アダムス氏は現在、「ホビット」のサントラ解説本を執筆中のようですので、これからまたさらに新しいこともわかるかもしれません。出版がいつのことになるのかはまだわかっていませんが、こちらもとても楽しみです。

この記事はTolkien Writing Dayに参加しました。