「決戦のゆくえ」の最初の感想

やれやれ、終わった。映画館に足繁く通うということを覚えたのも、アクション映画が怖くてまったく観れなかったのにこの12年で幾分慣れたのも、全部ピーター・ジャクソンのせいだ(≒”全部雪のせいだ”)。トールキンに出会うきっかけを作ってくれたことに感謝したい。LotRの映画化を知り「ホビットの冒険」を手にした時にすべてがはじまった。ホビットでは唯一となってしまったAUJのジャパンプレミアで遠巻きながら彼の姿を見た時にはうれしい気持ちになったのを覚えている。

「ホビットの冒険」の原作は「指輪物語」ほど緻密に描かれていない(余白があるという意味で)。その抜けや小さな事柄をうまく使って脚本化したものだと感心している。そのすべてを受け入れられはしないし、受け入れる必要もないかな。DoSの初見から、私が思っているトールキンの世界とPJたちが描いたそれは別のものだ、という気持ちが決定的になった。物語を読むということも、観るということも手法は違えど作者との対話なのだろう。「指輪物語」の読書体験は衝撃的だった。PJや多くのファンにとっても同じだろうと思うが、ここでは自分の思いを優先しようと決めた。おのおの誰の体験もみんな同じくらい価値があって、映画製作者のものだけが優先されるというわけではないし。だからといって気に入らないという一言で片付けることはまったくできないし、好きとか嫌いとかいう言葉に集約することもできない。

キャスト・スタッフの数々の仕事の功績には感動を覚える。本当に、ずっとすごかった。

それでは、今作に限った所感を綴る。何度か観ることで見方がかわることがあるかもしれないし、私の思い違いもあるのかもしれない。戦闘シーンが多く続いて体がずっと緊張状態だった。つらくて二度目は見れないし、DVDを買っても見れないと思ったが、思い返すうちにもう一度見たい気持ちがわいてきている。

ドル・グルドゥアと白の会議

ナズグルがサウロンとともにいる時に一番力を得るというのは理解できる設定だ(たしか原作に9人全員そろっている時がいちばん怖いという設定はあったはず)。LotRでさえ見たことのない甲冑をまとった姿を見せる。東洋的なデザインという印象で、だいぶ怖い。何かアドゥナイクか黒の言葉で呪文を唱えていただろうか。しかもいくら攻撃をしても効き目がないということだったのだろう。それでもエルロンドとサルマンの武術は華麗で、あの二人がガラドリエルに続いて表れた時には、予想はしていたがうれしいものだった。

しかしながらいちおうのとどめを刺したのはガラドリエルだ。追い払われるサウロンのビジュアルとともに満足していない。SFのような演出だったので笑ってしまった(ごめん)。ガラドリエルがどれくらい力を持つのかは考察をしてみたいところだけど、彼女の主立った役割は守ること、清めることだと思っている。サウロンの退却はガラドリエルの攻撃というよりは守備として結界(メリアンの魔法帯のような)のようなものをはり、そこから追い出したのだろう。

DoSの時から言っていることだが、ドル・グルドゥアへの道は細くてくねくねとしている(道なき道なのかもしれない)。ここをオークやトロル、ワーグの大群が通るのなら行軍に手間取るはずだ。他に公道がある可能性も考えたが、ラダガストがAUJまでドル・グルドゥアのことを知らなかったのだから(鳥に教えられた)おそらくもっと広い公道はないだろう…しかしながらドルグルドゥアは闇の森の西端に近いし、脅威的な速さでの行軍はサウロンの意志の働くところだっただろう。AUJでは陽の光のおかげで逃れられた霧ふり山脈のゴブリンたちでさえ日中の戦いに参加したのだから。

スマウグの死とバルド

「The Battle of the Five Armies」というタイトルながら、映画公開前に楽しみにしていたのはスマウグの死がどう描かれるのかということだった(トーリンや甥たちが死ぬことを知っているのに五軍の戦いを見なければいけないのはつらい。改変してトーリンを王に再び栄華を誇るエレボールを見てもいいと思っていた)。

統領の本質の描き方は嫌なくらいうまかった。ロープで首を絞められ、竜が真上から落ちてきてもなお生き延びるところはさらにしたたかさを感じる。シリアスなシーンばかり続く今作では数少ない笑いともなった。苦笑いとでも言うべきかもしれない。

家族思いというバルドの別の一面は彼のキャラクターを膨らませることになったけれど、直接的な形で家族愛が提示されることを、私はトールキンの作品に求めていない(DoS EEにあるドル・グルドゥアでのスラインの今際の言葉も同じこと)。美しいと思う気持ちがないわけではないし、バルドが町全体を統率するという状況になった時、バインがバルドに代わってきちんとシグリットとティルダを守るのはよかった。彼もいずれ王となる人で十分にギリオンやバルドの血を引き継いでいるのだろう。

谷間の町が破壊された時、ギリオンが弓でスマウグのうろこを1枚だけ剥がしている。スマウグ退治はギリオンから子孫であるバルドへと引き継がれた。

ドワーフたちの死

トールキンは彼らの死を淡々と描いている。直接的には触れていない。映画ではそうはいかないことはとっくに予想がついていたので、AUJでドワーフたちの生き生きとした姿を見た時に、彼らの死を見るのはつらいものになるだろうと覚悟はしていた。その中でもフィーリの死はあっという間に訪れて感情移入ができないまま終わってしまった。後ろの座席からすすり泣く声は聞こえてきたが。どなたかがフィーリはより危険なルートを勝って出たのだろうとツイートしていてなるほどと思った。

キーリは前作からそれよりは見せ場もあり、サントラにおいてキーリとタウリエルのテーマが良かったことも相まって気持ちの入るシーンだった。これ以上の感想はまだ語る気持ちになれない。

映画のトーリンらしい英雄性を持って最期を迎えられたのが、もしかしたらいちばんよかったと思う点なのかもしれない。氷上での戦いは詩的な美しさがあった。先日、DoS EEの鑑賞会の際にレゴラスは長剣(オルクリスト)を使いこなせていないという話があって興味深かったが、やはりその通りだったのだろう(それでも名剣を手に入れて使いたかった)。長剣を投げるという技はすごかった。トーリンの手もとにオルクリストが戻り、オークを退治するという真価を発揮した。返すものかと危ぶんでいたので良かった。

ところでアゾグが指揮をとっていた場所へドワーリンも駆けつけていたはず。私が見逃しただけかもしれないが、トーリンが一騎打ちをした時どこにいたのだろう?トーリンたちに対して援軍がないことは、戦局として不可能だったかもしれないが寂しいものだった。

トーリンの横でビルボが咽び泣いたシーンは思い出すとつられて胸が苦しくなる。「ホビットの冒険」の美しさはトーリンの今際の科白にあると改めて思わせられた。やってくれて本当によかった。さらに欲を言えばアーケン石とオルクリストとともに埋葬されるシーンも見たかった。

やってくれてよかったと言えばドワーフたちと別れる時のビルボのスピーチだった。ここに限らず大切に思っている原作のシーンをはずさないところがPJ映画の巧さとも言えるだろう。

レゴラス

すごいよ。強いよ。

バーリンとドワーリン

この兄弟はとてもいい。ドワーリンはクールに見えるが仲間に対して情が深く(エスガロスに残ったドワーフたちが生き残ってエレボールについた時にうれしそうにしていた)、バーリンは素直に涙を流す。

ドワーリンに関して言えば、玉座を前にしてトーリンと会話をするシーンが印象的だった。これまでトーリンの言うがまま従ってきたように見えるが、それも自分自身の信念を貫いていることで、いざという時には自分の考えを話す人物だということがわかる。しかしドワーリンから警告を受けてさえトーリンはそれを受け入れることはできなかったのだ。トーリンは心の片隅に残っていた良識によって自分自身を取り戻したのだ。

ラダガスト

シルベスター・マッコイさんの演じるラダガストはチャーミングだ。茶色の魔法使いとしての本性を発揮して大鷲とともに参戦する様子は、原作本来であればないのだろうが心強く思うものだった。ビヨルンも大鷲に乗って来ていてよかった。ここはEEに何かしら追加シーンがあるのかもしれない。

スランドゥイル

スランドゥイルが迅速に谷間の町の住民への援助(食糧を与えた)を行ったのは、エレボールや谷間の町が破壊された時の自分の行動に後悔の気持ちがあったからではないかと思った。White Gemsを取り戻す気持ちも本気だったと思うけど。これもまったくの想像だけど、エスガロスと交易をしていたのは自分の酒好きだけでなく、援助の気持ちもあったかもしれない。残念ながら統領の私腹を肥やすだけとなったが…。ドゥネダインのこと、アラソルンやストライダー(まだ10歳くらいのはずだけど…)のことを知っているというエピソードは、ただ単に自分の国のことだけを考えているように思えなかった。

トーリンとビルボ

ビルボのどこかしらにトーリンは癒しを見いだしていたのだろうし、ビルボの何かしらの性質がトーリンの素直さを引き出していたのだろうと思う。もしくは王位継承者ゆえに同族には見せられない素性なのかもしれない。ミスリルの胴着を与えるシーンはこれからLotRへ繋がっていく。どんぐりのシーンは映画オリジナルのエピソードだが、ホビット庄出身者の視点らしく心が温まるものだ。

ビルボとガンダルフ

特筆する必要がないくらいの名シーンだった。この期に及んであんなにお茶目な姿を見せるガンダルフは何者だ…!

サントラとエンディングテーマ

サントラを聴く余裕を持てなかった。次回以降の鑑賞で気をつけて聴いてみよう。

ビリー・ボイドによる「The Last Goodbye」はこの時はじめて耳にした。今度こそビルボの心境を歌ったものだ。優しい歌でほっとした。歌詞をほとんど見ていないので次回以降にまた。