ホビットのサウンドトラック「Guardians of the Three」を解析する

映画「ホビット:決戦のゆくえ」には、サルマン、ガラドリエル、エルロンドの白の会議のメンバーがドル・グルドゥアでとらえられたガンダルフを救出するシーンがあります。このシーンは原作においてはガンダルフの口頭から一言、二言程度で語られるだけでした。

ところで前作「ロード・オブ・ザ・リング」と本作「ホビット」の両三部作の映画音楽を制作したのはハワード・ショアで、彼は音楽でテーマをつくり、中つ国の世界と物語を表現しました。何度か映画を観て音楽に着目をすると、両作品で共通の音楽が使用されていることがわかります。

ロード・オブ・ザ・リング」には「The Music of the Lord of the Rings Films(以下、サントラ解説書)」というサウンドトラックを解説する書籍が発売されています。この本には繰り返し使用される音楽のモチーフをテーマとして紹介がされています。「ホビット」では未出版ですが、今回はこの本を参考に「ホビット:決戦のゆくえ」でのこのシーンの音楽を解析してみようと思います。

このシーンの音楽は前作から登場しているテーマがいくつも登場している例として最適だと思い、選んでいます。

解析する音源は本来であれば映画を元にした方がいいのですが、音楽のつけられていないシーンが多くありました。The Hobbit: Battle of the Five Armies Special Editionにある「Guardians of the Three」の方が楽曲としてのまとまりがあるので、今回はこちらを解析します。

Mordor Untitled

この楽曲は、三つの音が上がったり下がったりしながら繰り返すモチーフではじまります。これはサウロンを表すテーマの前触れとその終わりに使用されることが多いモチーフですが、サントラ解説書には名前が付けられていないので「Untitled」としていますが「Mordor/Sauron」の一部とする方がいいのかもしれません。

このモチーフはサウンドトラックの中盤にも登場しますが、サウロンの先触れとして使用される「いやな予感」のする音楽です。また、ホビットやエルフ、ドワーフや人間を表す音楽はその種族たちの文化的背景まで表すことに対して、モルドールやオークの音楽はただただ存在を誇示しているかのように単純か短いなモチーフを繰り返します。[1]こちらもその例に当てはまります。

Lothlórien

ロスロリアンが登場しない「ホビット」では、このテーマはガラドリエルを表すものになっていますが、ドル・グルドゥアの中に光の矢が差し込んだかのような映像と同じく、この場所でふだんは聞くことのない美しいメロディが流れます。

このテーマは様々なバージョンがあって、「ロード・オブ・ザ・リング:二つの塔」ではエルフの軍勢がロヒアリムの援軍をした際にはボレロのようなリズムを刻み、戦闘シーンを盛り上げています。

Mordor Skip-Beat

三つの音の塊が少しずつ音階を上昇していくパターンです。このパターンは他のモルドールのメロディと組み合わせて使用されることが多いです。[2]そしてまた、「ロード・オブ・ザ・リング」では三部作を通じて多くの場面で見つかります。「The Guardians of the Three」の1分30秒付近では、このパターンとロスロリアンのテーマのハイブリットを聴くことができます。

今回の楽曲には入っていないので余談ですが、映画本編には、サウロンが登場するシーンで「The High Fells (Extended Version)」とも共通の女声の歌が入ります。これはまだ解説がないですが、このスキップビートの形に似て聞こえる部分があり、もしかしたらアレンジかもしれません。0分54秒からと1分40秒から、3分3秒のあたりに着目してみてください。

Mordor/Sauron

1分47秒で一度、金管楽器の音が鳴り響きますが、予兆でしかありません。2分15秒あたりの弦楽器からはじまるメロディがモルドールとサウロンを象徴するテーマです。2分33秒からはガラドリエルの前にナズグルが現れるシーンで使用されています。

The Descending Third

Mordor/Sauron」の後ろでリズムのようにうねうねと流れる下降するモチーフが「The Descending Third」です。こちらもSkip-Beatと同じく、単独で使用されることはあまりないようです。2分33秒から低い音に注目してみてください。

Revendell

このドル・グルドゥアのシーンで最も喜ばしいのは、ガンダルフとガラドリエルの窮地に間に合ってエルロンドとサルマンが登場するシーンです。この時に流れるのは裂け谷のテーマで、裂け谷ではエルベレスへの賛歌と一緒に流れることも多々あります。「ロード・オブ・ザ・リング」ではエルロンドは戦争に加わることがなかったので、Revendellの勇ましい調子のテーマはここでしか聞けません。

ガンダルフのテーマなのかな?

ロード・オブ・ザ・リング」にはありませんでしたが、「ホビット」にはガンダルフのテーマと思しきモチーフが登場しています。五つの音から構成されているもので、これはDVDの特典映像でも解説されていなかったので、まだ確かではありませんが、ガンダルフを表すシーンで使用されることが多いです。ガラドリエルに一緒に来るように言うガンダルフの後ろで流れる4分14秒のメロディがそうですね。

戦闘中の音楽

女声合唱が主体で、同じパターンの低音が繰り返します。テーマとも言えないような音楽ですが、おそらくモルドールのテーマの派生系ではないでしょうか。指輪の幽鬼のテーマにも女声合唱が使われますので、そちらと共通でもあるのかもしれません。


タイムラインを作りました

どこでどのテーマが流れているのか、わかるようにTimeline of the Guardians of the Three(Google spreadsheet)を作りました。おおまかなものなので、多少のずれがあると思いますが、こちらを見ながら音源を聴くと、ここに書いてあることがわかりやすいと思います。


この記事は2016年4月6日のTolkien Writing Dayに参加しました。