The Study of Bag End

ファラミア卿に心惹かれる話

『指輪物語』の中で「好きな登場人物は誰か?」と問われたら、絞りきれず一人だけを挙げるのは難しく困ってしまいます。何人か挙げることを許されるなら、その中の一人に必ず入るのはファラミアです。ファラミアは登場するシーンこそ多くありませんが、物語の後半から欠かすことのできない人物として頭角を現します。

どちらかの善悪を問う話ではないのですが、自分の立場(≒価値観)を相手の立場に合わせて上り下りする人物と、そうでない人物がいます。『指輪物語』の登場人物の中で、例えばサルマンやデネソールは常に自分を権威のあるポジションに置き、言葉を変えることはありません。また、この傾向は最初の頃のメリーやピピンにも見られますが、彼らは旅の経験と出会い、奉公を通じて変化が見られます。逆に最初から相手に合わせた立場をとるのはフロドやガンダルフ、アラゴルンにセオデン。ガラドリエルにもそういった発言が見られます。ファラミアはそちら側に加えることができるでしょう。

父御に言わせると古の代の王のごとく威あって寛大に、慈しみ深く温容に見えることがファラミアの望みです(指輪物語 王の帰還(上) p.133)。”見えること”という言葉選びは皮肉が込められていますが…。物語の中でファラミアが国民から敬愛を受けるのはそのことだけが理由ではありませんが、ゴンドールの国民のみならず、用心深いサムの支持を受け、冷徹な乙女の心を溶かしていきます。

共感と理解を持って相手に接する姿勢と、文芸にも武道にも通じる優秀さ、そしてあの物腰の穏やかさと芯の強さ。どれをとっても素晴らしい人物で心惹かれずにはいられません。

このエントリーはトールキンライディングデーに参加しています。

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